今回は全塗装をお考えの方が一番気になっていると思われます、全塗装自体の耐久性、塗装というものについて少し詳しくお話をさせていただきます。

全塗装をしたら、その状態を何年維持できるのか、これは皆さん非常にきにされる内容だと思います。あえて、その答えを先に言ってしまうと、それは保管状況に非常に大きく左右されてしまうという事実です。塗膜の劣化の大きな外的要因は主に紫外線や花粉や鳥の糞などの付着物や塗膜についてしまう傷などです。これをいかに防ぎ、塗膜への悪影響を抑えるかが、塗装をきれいな状態で保つカギとなってきます。もちろんこの話は、前提としてしっかりとした足付け処理や下地処理ができている状況での話になります。それができていれば2年や3年で塗装がだめになるようなことはありません。もしそうなってしまった場合は必ず何かしらの原因があるものと考えられます。

足付け作業は非常に大切な作業です

今回は塗料自体の特性や外的要因について少し詳しく説明をさせていただき、少しでもきれいな塗装状態を維持する参考になればと思います。

塗料について

まずは一般的に使用されている塗料についてご説明させていただきます。

①新車塗装とはどういった塗装なのか

新車の塗装は一般的にポリエステル樹脂系の塗料や熱硬化アクリル樹脂塗料を使用していると思います。この塗料は新車のメーカーの生産ラインで使うことが可能な特殊な塗料だと思ってください。

職人の塗装法をロボットに学習させ、ロボットがミスなく全く同じ動きで塗装していきます。その後、乾燥段階で摂氏150度の高温下で乾燥をさせていきます。

この塗装方法を焼付塗装と言います。

焼き付け塗装は温度が150度前後の熱によって塗料の反応が進み、分子レベルで(結合)しあう『熱重合型』塗料を使っています。熱により化学反応させるとのことでしたので、つまりは硬化剤は使っていないと言うことだと思います 。

この焼付塗装が強靭な塗膜を作ている大きな要因です。

②補修塗装とはどういった塗装なのか

対して一般的な補修塗料はどういったものなのでしょうか。

ディーラーさんでも、町の板金屋さんでも基本は同じアクリルウレタン塗装を使用しています。そもそも新車の塗料とは同じものを使っていません。と言うよりも使うことができないのです。 焼付塗装は150度の高温で反応し硬化しますが、 補修作業時の車にはプラスチック部品や、ゴム製品、その他もろもろが装着されています。それらの部品は150度もの高温には耐えられず、溶けたり変形してしまいます。焼付塗装は生産ラインの部品が何も取り付けていない状態でのみ可能な塗装方法なのです。しかし、このウレタン塗料は膜厚があり、艶感、耐久性などは新車の焼付塗装より品質がいいというメーカーさんもいらっしゃいます。

またそもそも塗装には、塗装自体の色を決定するベース塗料、それを保護するためのクリアー塗料があります。このクリアー塗料の品質は塗装の耐久性に非常に大きく影響します。一般的にはベースには1液塗料を使用します。これには硬化剤は含まれず、そのままの状態では非常に不安定で、有機溶剤によって簡単に侵されてしまいます。また、ベース塗料には2液タイプの硬化剤によって硬化する塗料も存在します。この塗料はクリアー塗装を行わずに硬化させることが可能なため、外観を重視しないトラックなどに使用されることが多いです。

アクリルウレタン塗装は硬化剤の化学反応で硬化しますが、熱を加えることにより硬化は促進されます。焼付ブースなどと言われるのは熱を加え硬化を促進させ、乾燥時間を短くする目的のもので、新車の焼付塗装とは異なる性質のものです。

③では、全塗装ではどうなのか?

当店では全塗装以外も一般的な板金補修作業も行っております。もちろん他の板金屋さんやディーラーさんと同じようにアクリルウレタン塗料をしようしています。この点においてはほかのお店とで特に変わることはありません。

塗料の性質がなんとなくわかったところで次はクリアー層の説明に入ります。そもそも塗料の種類自体はディーラさんでも板金屋さんでも同じものを使用しています。しかし、クリアー塗料はそれぞれのお店ごとに特色が出てくるものだと考えます。

クリアー塗料は2液のアクリルウレタン塗料を使用しますが、そのクリアー塗料の特性にはかなりの幅があるのが事実です。

まずは主剤に対する硬化剤の比率が様々です。トラック用の10:1の塗料から一般的な4:1や3:1のクリアーや、高品質な2:1など様々な種類があります。この○:1の比率が原液に占める硬化剤の割合になります。この硬化剤には塗膜の強度を高める働きがあります。つまり、硬化剤を多く含むクリアーほど強靭な塗膜を形成することが可能です。しかし固ければ固いほど良い塗膜かと言われるとそうとも限りません。バンパーなどの樹脂素材は凹んだり、ある程度変形するので、その応力に塗膜が対応できません。固い塗膜ほど、柔軟性に欠けてしまい割れてしまうことが出てきます。

クリアーを固めたものです

しかし、一般的に硬化剤の割合が多くなるほど、光沢感や肉厚感が増し、塗膜自体も厚くなりますが、価格は大きく上がってしまいます。
これは、10:1のクリアー塗料を使用した場合と2:1のクリアー塗料を使用した場合、見た目ではっきりと違いが判ると思います。それほどクリアーの性能には差があり、このクリアー層の選択は非常に重要になるものなのです。膜厚があれば、ベース塗料に不具合が出るまでの時間が長くなり、より長時間塗装後の状態を維持できる可能性が上がります。このクリアーの選択は塗装の耐久性にも、美観の面でも大きく影響してきます。また、自己修復機能を持ったクリアーも存在します。このクリアーはレクサスなどでも採用されているもので、ついてしまった小傷が勝手に消えていくという画期的なクリアーです。また、艶感も非常に出ますので特に黒色に全塗装するお客様に好評です。

塗膜の劣化について

次は塗膜の劣化について説明させていただきます。

そもそも塗装の劣化はどうしておきてしまうのでしょうか?
塗装の劣化の主な原因は 光学的現象 物理的現象、化学的現象によるものです。

光学的現象

例えば、太陽の紫外線などの影響で、新車の時に輝いていた塗装の艶が無くなってしまうこと。特に光を吸収する黒色や濃淡色で影響が大きくなる傾向にあります。これを防ぐには車庫保管やカーカバーを用いることが有効です。また、こまめにワックスをかけることも有効です。


物理的現象

硬めの洗車ブラシで洗車を行い、擦り傷がつき、塗膜を痛めてしまうこと。砂埃を十分落とさずに擦ってしまい、傷がついてしまうことなど。洗車機での洗車を避ける方が多いのはこの劣化を防ぐためです。柔らかい布や下の画像の一番左の写真のような耳の縫い目のないファイバークロスでの洗車がおすすめです。

ファイバークロスにもさまざまな種類のものがあります


化学的現象

酸性雨にさらされたり、飛散している花粉が付着してしまうことや、黄砂を含む雨による汚れを放置すると、雨じみができ塗膜が侵されます。車が汚れたときは可能な限り早めに洗車をして、付着物を洗い落とすことが有効です。

少々難しいですが、こちらに詳しく書かれた記事がありましたので記載しておきます

塗装塗膜の美観的機能の劣化 と評価法

https://www.jstage.jst.go.jp/article/mls2001/14/3/14_3_108/_pdf

すべての対応策としてガラス系のコーティングも有効だと思います。ただ、コーティングの膜厚はせいぜい数㎛です。対してクリアー層の膜厚は30㎛以上です。個人的な見解ではコーティングをかけるよりもクリアー塗装を一回多く施工するほうが物理的現象による影響を防ぐのには効果が高いのではないかと思います。コーティング施工の効果は光学的現象や、化学的現象に対して行う意味合いが強いものだと思います。

もちろん当店ではWクリアーとして、そのようなクリアー層を厚くする施工も行っております。また、全塗装とセットで全塗装後一か月点検とセットでのコーティングプランもご用意しておりますのでお気軽にお問い合わせください。しかしこの対策も確実な下処理を行っていることが前提です。下地が悪ければ、どんなに良い塗料を使用しても、どんなにアフターケアを頑張っても意味がありません。

以上のことをまとめますと、全塗装店で行える対策には

  • 下地処理を確実に行い、塗装の品質を向上させること。
  • より高品質なクリアーを使用し、強靭な塗膜を形成させること。
  • そのクリアー層をより厚いものにして、物理的現象の影響を抑えること。

この状態で作業していれば5年~10年ほどの耐久性は持ち合わせています 。それを更に安定したものにする方法としましては

  • ガレージ保管やカーカバーを使用したり、こまめにワックスをかけて、光学的現象の影響を抑えること。
  • 柔らかな素材を使用してこまめな洗車に心がけて、物理的現象の影響を抑えること。
  • それらの手間を最小限にするためにコーティングを施工して、膜厚増加により物理的現象の影響を抑え、汚れの付きにくい塗膜にして、化学的現象による影響を抑え、紫外線カット効果により光学的現象を抑えること。

このような対策をされているお客様の車は、全塗装後数年たった今でも非常に綺麗な状態を維持されております。

全塗装をしてみたい、魅力はあるけど大丈夫だろうか?そう感じる方も多いと思います。そんな時は是非一度お気軽にお問い合わせください。疑問なことや不明なことはどんなに些細なことでも、納得できるまでご相談に応じております。スタッフ一同、不安も不満もない作業に努めてまいりますのでお気軽にお問い合わせください。