今回は全塗装を行う、そのこと自体に焦点を当て、全塗装にはどのようなメリットやデメリットがあるのかを個人的な見解をもとに説明べきればと思います

全塗装のデメリット

まずはデメリットから見ていきましょう。

  1. 全塗装を行うと販売時に買取価格が下がるのでは?
  2. 全塗装の耐久性は?
  3. 全塗装って高いんですよね?

気になるデメリットはこのような内容ではないでしょうか。

まずは全塗装とはどういうものなのか、を確認していきましょう

「全塗装」
これは言葉の通り、車を1台すべて塗装する作業を指します。その他の表現で、全P(ゼンピー)、オールペイント(オールペン)、まるペン、ゼント、塗り替えなど、様々な呼称がありますが、意味することは全塗装です。
全塗装の中には、塗装前と同じ色で再塗装する場合と、そうでない色で再塗装の場合があり、後者に限って塗り替えの表現をすることもあります。

では、全塗装の作業はどこまで塗装作業するのか?という疑問が出てくると思います。

一般的には、現状で純正色の部分はすべて塗装することだと思います。これが大きな基本的な全塗装の解釈です。これを基本に考えて、その他の部分をどうしていくか、当店のように、ドアの内側は塗装しないプランや、ドアの内側まで塗装するか、装着されているエアロを塗装するのか、グリルのメッキ部分は塗装するのか、などの様々な選択肢が出てくると思いますが、基本的にはお客様が塗装を希望する箇所は塗装することが可能です。

ただ、一部の素材では、塗装をすることを前提にされてない素材もあります。この素材の代表が、無塗装バンパー、ウレタンバンパー、樹脂バンパーと言われるPPを素材とした樹脂部品です。これは、塗装のコストを下げる目的のほかに、無骨さや、ワイルドさを表現するために一部のSUV車などにも使用されています。この素材は、そもそも汚れを付着しにくくする目的も担っているために、塗装するには下地処理に追加の作業が必要になってきます。また、耐久性においては、その他の素材を塗装する場合よりも低下する可能性があることは否定できません。

しかし、トヨタのC-HRなどのホイールハウス周辺の樹脂パーツは、ボディーと同色で塗装することで車のイメージが大きく変わるため、樹脂部品のみの塗装を希望される方もおられます。

少し話がそれてしまいましたが、次は同色で全塗装を行う場合について説明していきます。

なぜ、同じ色で塗装するの?と考える方も多いと思います。しかし、中古車を購入された方ならわかるかもしれません。
中古車というのは、同じ車を比較した場合、その車両の価値を増減させる要素がいくつかあります。年式、走行距離、内外装の程度、事故修理の有無などがそれにあたります。その要素の中で、全塗装を行うことによって、外装の評価点は上げることができるのです。ここで大切なのは、純正色で全塗装し直すということです。オークション会場ではこの場合、全塗装ではなく、修理のための塗装と同じと判断をされます。

つまり、デメリットなく、きれいに修理された車の評価を獲得できます。もちろん手抜きや、塗装技術が低いものはこの限りではありません。実際に関東圏のクルマ屋さんで、すべてのクルマを自社で同色に全塗装して販売している車屋さんも存在します。販売車両に全塗装の工賃が上乗せされるため、車両価格はある程度高くなりますが、口コミを拝見する限り、ユーザー様は全塗装の説明を受けたうえで納得して購入されているようです。さらに、外装が新車のようになるために、満足度は高いようです。

【よくある疑問】全塗装を行うと販売時に買取価格が下がるのでは?

同色に全塗装をする場合に限っては、車両の価値はむしろ上がる場合が多いです。しかし、全塗装にかかった費用=車両価値が上がった金額にはならないでしょう。全塗装に30万円かけて新車のようにしても買取価格が30万円あがるわけではありません。

では、色変えの全塗装ではどうでしょうか?これは私が言う、全塗装はカスタムだ!という主張にもかかってきますが、基本的には買い取りを避ける傾向にあると思います。例えばカスタムカーをイメージしてみてください。

プリウスを購入しました。ホイールは20万円かけてインチアップ。好みのエアロはフルセットで20万円です。押し出し感の強いフロントバンパーは10万円でした。改造費は総額50万円です。

これを改造した翌日に買い取り業者さんに査定してもらいます。果たして改造費の50万円を上乗せで買い取りしてくれるでしょうか。それはありえないでしょう。一部のショーカーやショップ公認のカスタムカーを買取依頼してもかかった金額をそのまま上乗せすることはできないと思います。残念ながら、車の価値は投資した金額分は上がらないでしょう。仮に1年後に査定したらどうでしょう。新品で購入した部品は使用感が出てきます。査定前にきれいに洗車するのはもはや常識ですがどれ程きれいにできたとしても結果は同じだと思います。なかには突き抜けたカスタムをすればプラス評価はあるようですが、それでも改造費と同額になることはないと思います。

全塗装でも同じようなことが言えると思います。30万円かけてきれいになった車を30万円高く買取してもらうことは難しいでしょう。一部の絶版車や希少価値のありクルマは例外もあるでしょうが基本的に大きくプラス査定になることは考えにくいと思います。凹みだらけのクルマをきれいに全塗装して査定してもらえば車両価格は上がる可能性がありますが、やはり、かかった費用分が査定に上乗せされることは難しいでしょう。それどころか、全塗装をしてある車を回避する傾向もあると思います。事故を隠すためじゃないか、何か理由があるんじゃないか、あえて買う必要はない、そう考えられるのも理解はできます。

つまり、全塗装した車は売りにくくなる可能性はあります。そのあたりがカスタムカーに似ている部分でもあります。そもそも車を売る場合は純正で、きれいで何もしないのが一番高く買い取ってくれると思います。しかし、そのオンリーワンのクルマがいい!という買い手に出会えればこの限りではないかもしれません。

【よくある疑問】塗装の耐久性について

続いて塗装の耐久性についてです。

これは施工者の施工方法によるところが一番大きく影響する部分だと思います。基本的に塗装を行う部分の部品は取り外した箇所が多いほど、作業しやすくなります。つまり、分解すればするほど完成度が上がり、費用がかさみます。
塗装個所に不具合がある場合、例えば錆がある部分でもそのまま塗装すれば必ず再発します。そうならないための下地処理には手間と費用が掛かります。この部分をどこまで処理するかで耐久性は大きく変わってきます。

一か月きれいな状態を維持できればいいのなら処理しないでもいいでしょう。しかし、10年維持したいのなら確実な下地処理が必要です。ではこの処理方法はすべての業者さんで同じなのか?そんなことはありません。その部分こそが、作業者の経験や感覚、技術が現れる部分だと思います。「教科書通りに作業しました。」これは最低限の作業です。「10年前にやった作業はこの方法で、いまでも大丈夫」これが経験からくる技術だと思います。

では同じ作業をしたらどの業者さんでも同じ工賃なのか?これもそうではないでしょう。通常の板金作業では専用の見積もりソフトというものが大手メーカー何社かが販売しており、どのようなソフトを使用して見積もりをしても同じような金額になります。しかし、全塗装については目安となるものがない為、板金業者側の言い値になることが多いと思います。
A社では40万円の見積もりが、B社では50万円かもしれません。この10万円の差はいったい何でしょう?これは誰にもわかりません。A社のほうが安いから適当な作業をしているのか、B社が割高な仕事をしているのか、すべての作業を確認せずに高いのか安いのか判断できないのです。仮にA社もB社も全く同じ仕事をしていれば、A社で依頼するべきです。しかし、A社はやるべき作業をしていないかもしれません。

では、ユーザーはどうするべきか。答えは、すべての作業を報告してもらうことだと思います。作業途中に予期していなかった不具合はなかったか、下地処理の方法は適切だったか、それにかかる費用は納得できるものか、事細かに対応してくれているか。これができていれば、全塗装でも板金塗装と同じ耐久性を持たせることが可能と考えます。つまり、全塗装に限って耐久性が低いわけではなく、施工者の施工方法によるところが非常に大きいということです。

しかし、塗装は色によって耐久性が違います。新車のように施工方法が決まっている場合は原色系の色、濃淡色は比較的耐久年数が短くなり傾向にあります。しかし、全塗装では、高耐久の塗料に変更したり、クリアー層を厚く施工したり、耐久性を伸ばす方法があります。しかし、この方法も費用がかさむというデメリットが付きまといます。いいものを作るにはそれだけ手間と労力が必要になってきます。

【よくある疑問】全塗装って高いんですよね?

最後に全塗装ってお高いんですよね?についてですが、これは今まで長々と説明をした文章が答えになると思います。

確かに全塗装の金額は高額になります。これは塗装する面積、下地の処理、工程の多さなどを考えれば仕方のないことのようにも思います。いいものを作るにはやはり、時間とお金は必要になってしまいます。その中で、作業工程を削らずにどれだけ効率的な作業を行えるかが大切な要素になってきます。
当店のように全塗装に特化した業者と、全塗装を年間に1件しかしていない業者さんとでは経験値が違います。その差は時間効率の差となって現れると考えます。毎日している作業と、年に一度しかしない作業では効率が異なるのは当然です。てこずって時間のかかった作業は、その分の料金をもらわなければいけません。それは全塗装の依頼を受けるときにわかっているはずです。その為、高い料金設定をする業者さんも存在することは事実です。

ここまで長々と説明してきましたが、簡潔に表現すると

  • 必ずしも査定金額が下がるわけではないが、状態のよくないものは敬遠されがち
  • 耐久性は板金塗装と変わらないが、施工業者の施工方法と技術による 一般的に5年から10年ほど
  • 総額は高価になるが、作業工程や内容を考えると致し方ない

と考えております。

リスクを減らすために

また、解決策とは言えませんが、リスクを減らすために

①売却を前提にするなら、買取されないことはないが全塗装はお勧めしません。
②実際に店舗に行って相談して、作業者の人柄、作業方法や実情を質問しましょう。
③本当に省ける作業や不要な作業がないかお財布と相談しましょう。

全塗装のデメリットはこのようなものになると思います。

しかし、それ以上にメリットに感じることがあるのでこのHPにたどり着いた方が多いと思います。
そのメリットについて説明できればと思います。

全塗装のメリットについて

今回は全塗装のメリットについて個人的な見解を含め、説明していこうと思います。ひとくちに全塗装と言ってもその作業内容は施工店、作業者の熟練度、作業内容によって仕上がり具合も異なったものになってきます。今回は、標準的な内容で行った全塗装について説明していきます。

全塗装をすることで得られるメリットにはどんなものがあるでしょうか。全塗装は高い金額を支払う作業です。それに見合った効果がなければだれも全塗装はしないと思います。大きく分けるとこのような考え方ができると思います。

  • 全塗装を行うことで新車同様の外観を獲得できる
  • 思い入れのある車に乗り続けることができる
  • 自分だけのカラーに仕上げられる

全塗装を行うことで新車同様の外観を獲得できる

現在のボディーの状態にもよりますが経年劣化による塗装の色剥げ、痛み、凹みなどを修正し、新車のような輝きに仕上げることが可能です。一般的にはこの部分を求めるお客様が最も多いと思います。

思い入れのある車に乗り続けることができる

現在では新車で手に入れることができない。ほかに購入したい魅力的な車両がない、と考えるお客様に多い理由です。また、何年もの間いろいろな場所に出かけたり、様々な思い出を共有してきた車を、より長く乗り続けていきたいという思いから全塗装を行う方も多いです。

自分だけのカラーに仕上げられる

これはこれまでの理由にプラスされる要素になることが多いです。きれいな外観にするのなら、ついでにイメージを変えたい方、購入時にはこの色がよかったが、様々な理由で選択できなかったお客様が色変えも目的の一つとすることがあります。実はこの部分はいい意味で非常に選択肢が広がるために、その結果どの色にするか迷うお客様も多いです。純正色、他メーカーの純正色、つや消し塗装、色の塗分けなど、お客様の思った通りの表現をすることが可能です。

全塗装を行う方の理由は様々ですが、作業を行う側としては、

「この料金をかけて全塗装をする理由がある」と考え作業をさせていただいております。施工された車両の中には、全塗装料金でもう一台同じ車両が購入できるケースもありました。しかし、それではダメな理由があるのです。

その思いを私たち作業者が汲むことができなければ、お客様が納得できる全塗装を行うことはできません。ただ一つ、世界でオンリーワンなマイカーを手に入れることができるのが全塗装の大きなメリットではないでしょうか。